お母さんのお悩み ~「うちの子、お友達が出来ないんです」~
児童相談所でたくさんのお母さんに出逢い、お悩みを聞いてきました。
久しぶりにお母さんのお悩みシリーズです。
「うちの子、学校でお友達が出来ないんです」
小学校2年生になったばかりの男の子の事で、お母さんは悩んでいました。
「小学校に入ってから、ずっとですか?」
お母さんはうなずきました。
「保育園でもそうでした。一緒に遊び始めても、すぐに一緒に遊んでくれなくなるって。
本人も悲しんでいるんです」
「原因として、思い当たることはありますか?」
うーん、とお母さんは考えました。
「家にいる時には特に困る事はないんです。私の言うことは聞きますし。
ただ、保育園の先生から言われていたのは、すぐにお友達に手を出してしまうって」
「乱暴しちゃうって事ですか?」
「そう、みたいなんです。それでも、小学校に入ってからは、担任の先生が子ども達の遊びの中に入って、
うちの子が1人にならないように気を配ってくれていたんですけど、
2年生になって、担任の先生とお話して、『そろそろ、自分でお友達と遊べるようになる事を目指しましょう』
って言われて。確かにそうかな、って私も思ったんですけど」
実際、先生の手助けがないと、ほぼ必ず息子さんは一人ぼっちになってしまうようでした。
私は、お子さんと2人でお話しました。
お友達と遊べない事を息子さんも悩んでいました。
「わかんないんだ。最初から遊びに入れてくれない事もあるし、
最初は一緒に遊んでいても、途中から仲間外れにされちゃったり・・・」
「それは、悲しいね」
私がそういうと、彼はうなずきました。
心理テストし、その後、もう一度お母さんとお話しました。
「お友達との、遊び方が分からないようなんです」
私がそう言うと、お母さんは首をかしげた。
「遊び方、がですか?」
「ええ。誘い方もよく分からないみたいで」
「そういうのって、勉強が必要なものですか?」
お母さんに尋ねられ、私は答えました。
「勉強が必要という事ではないんですけれど。
ただ、息子さんの場合、遊んでるつもりで、お友達に手を伸ばしたら結果叩いたと思われてしまったり。
遊びに誘うつもりで突き飛ばしてしまったり。そういう事があるようなんです。
息子さんもおっしゃってました。気が付いたら、お友達が『痛い』って言ってるって」
息子さんは年齢よりも体が大きいお子さんでした。
だから他のお子さんよりも力が強いであろう事もご説明しました。
「お家では、お父さん、お母さんと一緒に遊んだりしています?」
私の質問にお母さんは困ったような表情を浮かべた。
「私も主人も忙しくて・・・保育園も延長時間ぎりぎりになってしまう事が多いですし。
家に帰るとご飯を食べさせて、お風呂に入らせて寝かせるのが精いっぱいで。」
週末はお母さんもお父さんも自宅で仕事をする事も多いようなのです。
「だから、外食する事はありますけど、家にいる時は、
1人でゲームをさせたり、テレビを観させていることが多くて」
ご両親ともに忙しければ、仕方のない事です。
ですが、お子さんにはもうちょっと、お父さんお母さんの関わりが必要です。
私は提案しました。
「お父さん、お母さんとで、お友達と一緒に遊ぶ練習をしてみませんか?」
「練習、ですか?」
「はい。息子さんはもともと、お友達とどう遊んで良いのか分からなかった事に加え、
今は自信がなくなっていて、お友達に声をかけるのもためらっているようなんです。
だから、一緒に遊びたい時は、なんて声をかければ良いか。
誘う時はどの位の力で手を引いたら良いか。」
「普通、練習って必要なんでしょうか?」
お母さんは尋ねました。
「どのお子さんにも、必要、という訳ではないです。
子どもって、お父さん、お母さんとの体の触れ合う遊びを通して、
お友達との遊び方を学ぶんです。
ゲームやテレビだけだと、どの位の力が相手にとって痛いかが
分からないので・・・」
「放って、置き過ぎたかしら・・・」
お母さんは悲しそうな表情を浮かべました。
「今は、お子さんにゲームをさせたり、スマホをいじらせたりするのは
普通の事です。ですけれど、お子さんが困っている所だけは、
お父さん、お母さんが手助けしてあげる事が必要なんです」
お父さん、お母さんは忙しい中、交代で時間を作り、
鬼ごっこやボール投げ、サッカー、などをするようにしてくれました。
すると、実際にお子さんの力が強すぎたり、声をかける前に手を出したり、
という事に気づき始めてくれました。
そして息子さんも、少しずつ友だちの遊びに入れるようになりました。
私がお母さんとお子さんにお会いしたのは1回きりで終わりとなり、
その後は電話でお母さんから、報告を受けるだけとなりました。
スマホ、ゲーム。子どもは時間を忘れて遊んでくれます。
でも、やっぱり、お父さんお母さんと遊ぶ方が子どもには楽しくて、
そしてそこから人間関係のたくさんの事を学ぶのだ、と
私は思うのです。