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山脇由貴子心理オフィス

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渋谷区 児童養護施設 若草寮 施設長刺され死亡

2019年02月26日

渋谷区幡ヶ谷にある児童養護施設「若草寮」で

施設長である大森信也さんが、4年前まで入所していた

田原仁容疑者(22歳)に刺されて死亡する事件が起きてしまいました。

 

残念でなりません。

若草寮は児童相談所勤務時代、たくさん一緒に仕事をしていた施設です。

私が児童相談所を退職した後も、施設を出た子どもの達の

アフターケアなどで、一緒に仕事をしていました。

 

亡くなった大森信也さんは、いつも明るく、子どもに優しく、

子どもにとって最善を考えている方でした。

そして若草寮は、とても丁寧に、子どもに関わる施設です。

退所した後、うまく自立出来ずに、精神的に不安定になった子を

職員のお金でカウンセリングに通わせるなどもしている施設です。

 

田原 仁容疑者は「施設に恨みがあった」と言っているそうです。

でも、私には信じられません。

確かに、児童養護施設は家庭とは異なり、

不自由な面もあります。

お友達の家に外泊出来なかったり、携帯代も自分で払わなくてはいけなかったり。

集団生活ですから、ルールもあります。

その生活に不満を抱く子がいるのも事実です。

 

ですが、一番の問題は高校卒業後、つまり施設を出た後の

子ども達の自立に向けてのサポートがないことにあると私は思うのです。

進学希望の子は、国の奨学金がもらえるようになってきていますが、

まだ、返済しなくてはならない奨学金を使う子もおり、

学校に通いながらアルバイトをして家賃を含む生活費を稼ぎ、

仕事を始めた後は奨学金を返済しなくてはなりません。

「もう勉強したくない」

という子どもは就職となりますが、

就職先が見つからず、アルバイトで生活する子もいます。

国からの手当ては何も出ません。

 

一般家庭でも、18歳の子どもが自立するというのは大変なことです。

そして児童養護施設で生活する子どもは、虐待を受けて育っていたり、

心に傷を抱えている子どもがたくさんいるのです。

 

少ない収入で欲しい物も全て我慢。

働きづくめで遊ぶ時間もない。

 

学校を途中でやめてしまう子、自立出来ない子はたくさんいます。

そして、さらに心の傷を深めてしまう子も。

 

同年代の周りの子を見ると、皆には帰れる家があり。

食事を作ってくれる親がいて。

サークルや旅行、遊んでばかりいる。

羨ましくても、児童養護施設出身の子には、帰れる家がなく、

頼れる大人もいないのです。

 

自分の人生は、どうしてこんな風になってしまったのか。

自分はどうしてこんなに不幸なのか。

どうして苦労ばかりしなくちゃいけないのか。

 

そんな不満を抱くのも当然です。

 

田原 仁容疑者も、お金も無くなり、住む場所もなくなり、

困り果てていたのではないでしょうか。

自分の人生への不満を怒りを誰かにぶつけたかったのではないでしょうか。

 

そして思い浮かぶのは自分が生活していた施設しかなかった。

怒りをぶつける相手は施設職員しか思い浮かばなかった。

自分の人生の不幸の責任を取ってくれる人はいないから。

逆に言えば、一番身近な存在だった。

本当は「苦しい、助けて」と言いたかったのではないでしょうか。

 

18歳を超えた子どもは、児童相談所には相談出来ません。

児童相談所が相談を受けるのは18歳未満です。

そして、生活に困っても、国から受けられるサポートはありません。

田原 仁容疑者は加害者になってしまいましたが、

自分自身を傷つけるしかない子もいます。

 

頼れる親、大人がいないのに、18歳でいきなり

自立しなさい、と言われる。

それは無茶な話です。

 

この国には、まだまだ子どもを守る制度が足りていません。

児童相談所を強化し、虐待されている子どもを守る。

そして、虐待を受けて育った子どもを幸せな大人として自立させる。

それが、国の責任だと私は思うのです。

児童養護施設出身の子どもへの住居の提供と生活資金の援助。

現場はずっと必要性を感じ続けています。

 

子どもは保護して終わりではありません。

心のケアをし、育て直しをし、日々の生活に安心感を抱かせ、

そして大人になるのは幸せなんだ、と感じさせてあげる。

その為に、児童養護施設や自立援助ホームなどの

子どもを預る現場の職員は必死で頑張っています。

それでもこんな事件が起きてしまう。

 

自分達が面倒を見て来た子どもに、施設長が、

職員が殺されてしまう。

若草寮の職員、そして全国の児童養護施設の職員は

心を痛めていると思います。

どうしたらいいのか、と苦しんでいると思います。

2度とこんな事件を起こさない為に。

施設出身の子どもをサポートする制度も作ってゆくべきです。

 

大森 信也さんの死が悔やまれてなりません。

ご冥福をお祈りすると共に、若草寮の子ども達、

職員の皆さまの心の回復を願っております。