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山脇由貴子心理オフィス

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辛い子育てをしないために~子どもの障害を受け入れる~

2016年04月05日

いつも思うのですが、お父さん、お母さんにとって、子どもの障害を受け入れる、
というのは大変辛いことです。

私が働いていた児童相談所では、子どもの知的障害についての
判断をするのも重要な仕事でした。

その日、中学生の娘さんを連れてやって来たお母さんの悩みは
知的障害ではなく、娘さんの非行についてでした。
「学校にも行かないし、夜中は遊び歩いて朝帰ってくるんです。
 注意すると、逆切れして、また出て行ってしまうし」
あまりに言うことをきかないので、お母さんが手をあげてしまうこともあるとか。
でも、娘も反撃するので、取っ組み合いのけんかになることもあるそうです。

私は娘さんと2人で話をしました。
娘さんは、ふくれっつらで、私の方を見ようとせず、横を向いて座っていました。
それでも、お母さんと一緒に、ここ、児童相談所に来てくれている。
だから期待は持てる。そう、思いました。
言葉数は少なかったけれど、娘さんは私の質問に答えてくれました。
どうやら、自分のやっていることが「よくないこと」だということは分かっているようでした。
初回としては十分です。

私は、お母さんと娘さんにいつも通り一通りの知能検査を含めた心理検査を勧めました。
そして、一通りの検査が終わった段階で、私は思わず肩を落としました。
分かってしまった。やっぱり、そうだったのか。

検査の結果をお伝えするために、お母さんだけに来て頂きました。そしてお伝えしました。
「娘さんには、知的障害があると思われます」
辛い宣告だけれど。これは、私の義務だから。

お母さんは、動揺することもなく、表情も変えず、
でも、こぼれ続ける涙を手で拭っていました。
「おそらく、学校の授業は聞いていてもほとんど分からなかったんだと思います。
 だから、行かれなくなってしまったんだと」
そして娘さんは居場所を得たような気がした。一緒に過ごせる、夜遊び出来る仲間を見つけて。
親しい訳ではないけれど、ただ、一緒にいればいいから。

「やっぱり、そうだったんですね」
お母さんはあふれる涙を手で拭い続けながら言いました。
「分かって、良かったです。だって、塾に行って、どんなに勉強しても、ちっとも出来ないんです。
 何時間も勉強しているのに、やっぱり『分からない』って。」
お母さんには、ちゃんと分かっていた。娘さんが努力していることも。
そしてその涙ぐましい努力をお母さんも悲しんでいた。

「学校のお友達とも、うまく付き合えなくなっていたんだと思います」
私がそう言うと、お母さんはうなずいた。
「小学校の頃から、すぐにお友達とトラブルを起こして・・・
 言葉より先に手が出てしまって・・・」
「自分の気持ちがうまく伝えられなかったんだと思いますよ」
私がそう言うと、お母さんはちょっとだけ、笑顔を浮かべた。
「私と、似てるんですね」
そう。だから喧嘩になってしまう。お母さんは分かってくれました。

娘さんの知的障害の判定は一通り終わりましたが、その後もお母さんと娘さんは
自発的に2人で通って来て下さいました。
娘さんの夜遊びはそう簡単にはなくならず、お母さんがカッとなってしまうことも続いたからです。

2人で来ているのに、待合室では一番離れた席に座り、2人でふてくされた表情を浮かべていました。
一度は、お母さんが
「夜遊びをやめないなら、もうこの子は面倒見れません。連れて帰れません」
と言い、娘さんは
「夜遊びも止めないし、絶対家に帰る」
と言い、お互いが、
「そう、言っといて」
と私に言うのです。
仲良くしたい、仲良くしたい。
2人ともそう言っている気がしました。だから、ここ、児童相談所に通って来ているのだと。

その後、お母さんの気持ちも伝わったのでしょう。
そして娘さんも楽になりたかったのでしょう。
娘さんは特別支援学校高等部に進学しました。

入学直後は、娘さんが自分の障害を受け入れられず、
「私はここにいる子達とは違う!」
と言って学校に行かなくなったり。
これも当然です。彼女の障害は軽く、重い障害を抱えている子とは違うと思って当然です。
お母さん、お父さんが子どもの障害を受け入れるのがとても大変なのと同じくらい、
子ども自身だって、自分が「障害者である」という現実を受け入れるのは大変なことです。

私は何度も学校に呼ばれ、先生達と話し合い、お母さん、娘さんとも話し合いました。
でも、次第にお母さんは児童相談所には来なくなりました。
悪い意味ではなく。
電車を乗り継いで来なくてはならない児童相談所よりも、
家に近い、通いやすい場所にある、特別支援学校の先生達、という相談相手を見つけたからです。

児童相談所は、お子さんの知的障害の判断をし、お父さん、お母さんに伝えなくてはなりません。
でも、お父さん、お母さん、そしてご本人が障害を受け入れるお手伝いもする場所であるべきだと
私は思うのです。

そして、困っている、家族、お子さんにとって
「ここに来れば、きっと助けてもらえる」
そう思える場所であるべきだと。